【だんらんストーリー】私の祖母は 認知症
我が家は義実家と敷地内同居です。家の敷地内に母屋と私たちの家があり、畑もビニールハウスもあります。典型的な農家です。先日、義母が「白菜取れるけどいる?」と言うので、目の前で刈ってもらい、受け取りました。今日はそのお話。
農家で野菜をもらう時
農家に嫁いで初めの頃は、毎日のように「人参いる?」「ほうれん草いる?」「スイカもらったけどいる?」と野菜を渡されることに抵抗がありました。と言うのも、「物を貰ったら返さないといけない」と言う習慣があったのと、「断るのは失礼」と言う思いと、「毎回貰ったら悪い」と言う遠慮の葛藤があったからです。
とはいえ結婚して10年以上ですから、もう今となっては「いる〜」「いや、今冷蔵庫パンパンだからいらない」とはっきり言えるようになりましたが(笑)
で、農家で野菜をもらうことの大変さのもうひとつが「虫」です。
すっごいんです。虫の量。最初は「ひぃーーー!!!」って言っていたんですが、今ではそれも慣れて、可愛げない嫁へと成長しました(笑)
義母のくれた白菜
さて、先日もらった白菜。「虫がいるんだろうな…」と思ってチラッと葉っぱを覗くと、珍しくテントウムシがいました。
今年は白菜の出来が良いと言うことで、確かに立派だなぁと眺めていました。何を作ろうかな?と思った時、ふと私の祖母のことを思い出しました。
祖母の料理
私は関東の生まれです。東京の新宿に実の祖母が住んでいます。私が小学校低学年の頃に祖父が他界したので、以後25年は独りで生活しています。祖母の世代で考えると、非常に頭の良い祖母で、大学も出ています。祖母とは一緒に暮らしていたわけではないので、1ヶ月に1度程度遊びに行っていましたが、祖母が行くたびに作ってくれていた料理がいくつかあります。
ひとつはコーヒーゼリー。毎回孫たちが遊びに来るたびに、緑色の六画形のカップで作ってくれていた記憶があります。少し固めのゼリーだったのですが、何で固めていたんだろう…ゼラチン?寒天?よくわからないのですが、毎回美味しいなぁと頬張っていました。
そしてもうひとつ。白菜の漬物です。
白菜の漬物
祖母が作る白菜の漬物は、ちょっと変わっていました。確か、唐辛子と生姜の千切りが大量に入っていて、オイル漬けみたいになっていたと思います。普通の白菜の漬物とは違い、葉の芯の部分だけを千切りにして作っていました。そのためいつも作った後は大量の葉が残ってしまい、その葉を料理するのに苦労していたようでした。そこまでしてでも食べたい。そんな美味しい漬物だったのです。
98歳の祖母の今
祖母はもう数ヶ月後には誕生日が来て98歳を迎えます。しかし、数年前から認知症の症状が出てしまい、現在は入所中。今はもう孫たちのこともあまりわからなくなっています。
もちろん白菜の漬物のレシピも分かりません。
再現してみようかな?と思う反面、きっと再現はできないから、このまま記憶に留めておこうかな?と言う気持ちもあります。
子どもたちに残せるもの
私にも子どもがいます。将来は結婚して家庭を築いて、孫が誕生するかもしれません。そして、私もいつかはいなくなるわけです。
祖母が私の記憶の中に思い出を刻んでくれているように、私も子供やその子供たちに思い出を与える事ができるのでしょうか?時々ふと、そんなことを考えたりします。
思い出を刻む事ができるなら、それは温かみのあるものでありたいなあ、と願っています。
祖母の白菜の漬物は再現できないからこそ温かい思い出として残り続けるのかもしれません。それなら私もそんなレシピを1つ作ってみるのもいいな。こうして何でも記録として残せる時代だからこそ、記憶にしか残せないものがあるのも良いのかもしれません。
【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。
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