【だんらんストーリー】夫婦の時間

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結婚し子どもを授かり、育児が始まると、なかなか夫婦の時間が取れなくなります。私も育児をしていますが、夫婦でゆっくり過ごしたなんて、もう何年前のことだろう・・・?なんて考えてしまいます。

そのお子さんが医療的ケア児など、障害を抱えたお子さんだった場合、夫婦の時間はどんどん取れなくなってしまいます。

今日はあるご夫婦のお話

待望の赤ちゃん

初めて赤ちゃんを授かり、嬉しさ半分・不安半分の妊娠期間を経て、出産。出産にもそのご家庭ごとのドラマがあるものですが、このご夫婦も同様でした。不安な妊娠期間を経たものの、早産のリスクが高まり入院。この病院ではたとえ出産できても生きていけないとのことで、緊急で大きな周産期病院へ転院。極小未熟児としてAちゃんは生を受けました。

初めのお子さんということで、ご両親は、それはそれは大事に育てました。
しかし、極小未熟児であり、色々な先天的疾患もあっため、生まれてからも手術を繰り返し、入退院の繰り返し。
それでも幾度の危険を乗り越えながらも、元気に健やかに成長したAちゃん。

お母さんは大変聡明な方で、妊娠前からお仕事をされており、できれば復職したいと考えていました。職場の理解もあり3歳まで育児休暇を取得。それまで医療的ケアや療育を熱心にされていました。

医療的ケア児ママの復職

医療的ケア児のお母さんの復職には、いくつもの壁があります。
一番は、お子さんの預かり先をどこにするか、というもの。医療的ケアが必要なので、それを受けられる、つまり看護師が常勤しており、医師との連携もスムーズである必要性があります。

Aちゃんの医療的ケアは、胃瘻のみであったこともあり、比較的通所施設の受け入れは良好でした。極小未熟児として生まれているAちゃんは免疫力が非常に低く、些細な風邪でもすぐにこじらせてしまい、通所を休んだり、入院となることもしばしばありました。

そうなるとお母さんは、復職してもしばしば看護休暇を取らねばならず、仕事もままならなくなります。幸いAちゃんの職場はその点への理解もあり、仕事と療育を併用しながらお母さんは生活していらっしゃいました。

ご夫婦の時間

医療的ケア児を抱えると、もうひとつの問題。お子さんのケアができる大人がママだけになり、お子さんとお母さんが常に一緒にいなければならなくなる、という点。

お父さんが医療的ケアを買って出てくれる場合もありますが、それ以外のおじいちゃん・おばあちゃんではできない、ということも多く、主戦力はお母さん、お母さんができないときはお父さんという図式になります。

そうなると、ご夫婦の2人の時間なんて、ほとんど取れなくなります。

Aちゃんを見てくれる第三者の存在

幸いAちゃんはご親戚に、看護師の方がいらっしゃり、胃瘻注入も含めて、積極的にサポートに入ってくれていました。

ある日訪問すると、Aちゃんがなんか拗ねています・・・。あれ?どうしたの?と尋ねると、お母さんは苦笑い。

「昨日、主人と映画見に行きたくて、親戚にお願いしたから、拗ねてるんです」

なるほど、そうか。と思うと同時に、なんて素敵なご夫婦なんだろう、とちょっと嬉しい気持ちになりました。
このご夫婦はこうして時々ですが、仕事の休みがあい、医療ケアをご家族にお願いできるときは二人で近所のうどん屋さんへ行ったり、映画を観にいたたりと、ご夫婦の時間を大切にされていました。

私は育児が始まってから、こんな風にゆっくり主人と過ごそうとしたかなぁ?なんて自分の生活を省みたりもしたくらいです。

Aちゃん家族の未来

このお母さんの夢は
「Aちゃんが一人暮らしをすること」

それだけ聞くと、できるわけない!と思う方も多いかもしれません。しかし、現在は寝たきりの方でも遠隔ロボットを操作したりして、社会に出ています。ヘルパーの充実など課題は多くありますが、Aちゃんの場合「意思表出できるようになる」という目標が明確なので、今後の支援方針も明確になります。

Aちゃんがもし一人暮らしができて自立することができたら
きっとこのご夫婦はまた、ゆったりとお二人お時間を楽しむのかな・・・?
そんな素敵な想像をさせてくださったAちゃん家族。

残念ながらこの夢は叶えることができず
今はAちゃんは一足先にお空で暮らしています

けれど、Aちゃんの夢は
いろんな医療的ケア児の夢だと思い
かなえられる人を増やしたい
それがAちゃんの残してくれたものだと感じています。

Aちゃん、見ててね

【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。

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