【びぃどろ講座】SOS!どんどん痩せています

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先日戸別訪問に行った際に、体重低下が顕著なご利用者さんがいらっしゃいました。今日はそのお話。

どんどん痩せています…

長年訪問している方でもあり、現在でも定期的に訪問していたのですが、先月の段階でマイナス2kg(約1年)、この1ヶ月でさらにマイナス1kgになっていました。

Aさんは成人男性。重度の脳性麻痺。脳性麻痺の中でも、筋緊張が高く、常に全身に力が入っているタイプ。寝たきりであってもずっと筋肉をフル稼働させているため、体格は痩せ型。

体型から見ても、もう削ぎ落とせる場所はないだろうと思うのに、それでも体重低下があるという。

食事量、水分量、排泄頻度、薬の量、体重変化、生活リズムなど、きめ細やかに気をつけているご家族なものだから、体重の低下に非常に心を痛めている。

なぜ痩せる?

痩せる理由はいろいろあるけれども、結局は『摂取量<消費量』であることは間違いない。とはいえ、ここ最近急激に食事量が減少しているわけではない。時々精神的な要因から嘔吐することがあるとはいえ、それも1〜2ヶ月に1回程度。体重が大幅に減少する原因とはなりにくいのではないか?とも考えられる。

1日の食事状況を見直してようやく原因と思われることが浮かび上がった。

見えないご飯

そういえば通所の昼ごはんってどれくらい?

Aさんは上述の通り時々嘔吐をする。これは、精神的な要因が大きいのか、なかなか解消できない。ご家族はその都度胸を痛めている。

嘔吐を減らすために、これまでもあの手この手でやってきた。そのうちの一つが「食べ過ぎるのを減らそう」というもの。

そんなことから通所の食事量が徐々に減っていった。

現在なんと4割で打ち止め。500kcal設定だとしたら200kcalしか摂取していないことになる。それは足りない。通所先が、いろいろな事情から、なかなか切り込みにくい施設ということもあり、実際の食事形態・栄養量もかなり不透明。

「本当はまだ食べられそう?」と本人に尋ねると、大きくうなずく。

ご家族に「昼の食事量、せめて6割とかにあげません?」と提案をするけど、なんとなく煮え切らないお返事。なんでだろう?

施設と家族の関係

このご家族は、特にそう、と言うだけかもしれないが、とにかく施設に気を遣う人は多い。

もちろん人と人との関係だから、気を使わないのは言語道断なんですが、それにしたって気の使い方がすごい。

「食事量を増やすってことは、食事介助の時間取られるから、そんなに向こうに迷惑かけられないし…」

なるほど、そう思うのか。と改めて感じたりする。確かに私も自分の子供の預け先だったら、あまり強くいえないよなぁ、とも思ったりする。言い方は悪いが「人質」を渡しているような気分になるのだ。

文句言って、私に返ってくるならいいけれど、子供に何かされたらどうしよう?これが親の心理ってものなのかもしれない。

Aさんのご両親もまさにそう。そして、「通所打ち切られたらどうしよう…」と言う思いも隠せない。そう、通所施設と言う資源には、数の限界があり、「選べない」と言う現実がある。

だから「良い施設」に預けたい、と言う親心は当然だけれども、どんな施設であれ「ここしかないから、我慢しないと」と言う思いが生まれる場所も一定数あるのが現実だったりする。

仲介役は1人

そんなわけで、ご両親は昼食量を増やす提案に非常に消極的。でもこのままでいいはずがない。

でもでもだってを繰り返すご両親。そこで「通所の方へ提案するときに角がたってもいけないですね。じゃぁ仲介役の相談員さんに、お願いしましょう」と提案することに。

相談員、いるんです。もちろん。とても良い方ついてくれています。ご家族の前で電話をかけ、ことの事情を説明します。隣でご両親は不安たっぷり。

本人にも、ご両親にも不安を感じさせないように、そして相談員の方へは体重低下を止めるための食事量の調整について丁寧に説明をしました。

「食事量増やすだけ?いいですよ(笑)言っておきましょうね!」

ものの10分後、なんの問題もなく、食事量を増やしてもらえることになったとのご返答が。ほっ。

些細なことでも

この例は、ほんの些細なことです。こんな些細なことでも、人によってはとても大きな重大なことだったりします。

ましてや習慣化してしまったことを変えるって、実は大きなストレスだったりします。

本人と、家族と、通所スタッフと、そして相談員さんと、いろいろな方々が関わるからこそ、誰かの考えだけが突出してはいけません。どうやって調整していくか。それを考えて実行する。これが私なりの「だんらんコーディネート」なのかもしれません。

【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。

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