【ケアスタッフ向け】食事支援の2本柱

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食事支援とは

摂食・嚥下障害を抱えていると、家庭での食事はもちろん、学校や通所施設での食事にも不安を抱えるようになります。もちろん外食も困難になります。外食ができないと、一気活動範囲が制限されるため、本人・家族の生活の質が低下することも少なくありませんん。

摂食・嚥下障害を抱えていても、安全に・楽しく、そして栄養的に充足した生活を営めるようにする支援、それが食事支援です。

支援すべき2本柱

食事支援には2本の柱があります

調理

調理するステージ。”食事を作る”この段階そのものをどうするかです。調理は非常に複雑で、以下の要素を満たす必要があります。

●食事形態
●必要栄養量
●必要水分量

●食事形態

これは適切な食材で、適切な形態に調理できているか、を言います。適切な食事形態がどういうものか、については今回は割愛しますが、摂食・嚥下障害を抱える人にとって、適切な食事形態を理解すること以上に、それを”作り続けること”が、最も重要で難しいのです。

例えば、人参をミキサーにかけた場合、固い人参であればザラザラしますし、軟らかく炊いてある人参であればなめらかなクリーム状にできます。

「どの食材」を「どのように調理する」ことで、適切な食事形態にできるか、それを適切に整えることが、食事支援には重要です

●必要栄養量

例えば、ご飯は100gでおよそ170kcalです。しかし、お粥になると同じ量で70kcalまで減少します。お粥で同じ栄養量を摂ろうと思うと、およそ2.5倍のお粥を食べる必要があることになります。必要栄養量を考えると、食事内容への配慮が必要です。

●必要水分量

1日に必要な水分量は、年齢や活動量により変化します。

一般的な成人男性の場合
必要水分量=体重(kg)×40 の水分が必要とされます。

体重60㎏の場合、2400mlの水分が必要ということです。

この水分は、食事自体の水分量も含まれます。ですから、食事量が少ない場合は、お茶などのいわゆる”飲み物”の量を増やす必要があります

食事介助

どれほど安全な形態の食事が提供されても、食べさせ方を誤ると、誤嚥や窒息のリスクが高まります。正しい食事介助方法で食べさせること、これも重要な柱となります。

①食事姿勢
本人にとって、負担のない適切な姿勢となっているか

②食事ペース
本人のリズムに合っているか。早すぎると、飲み込めない。遅すぎると疲れる、などに配慮しましょう

③1口量
一度に口に入れる量にも配慮が必要です。多すぎると窒息や誤嚥のリスクは高まります。しかし少なくすると飲み込むための口の刺激として不十分なことも多々あります。本人にとって適量をみつけましょう。

④五感刺激
障害や病気を抱えることで、感覚のバランスが乱れることもあります。味覚刺激だけではなく、声掛けによる聴覚刺激、スプーンのあて方による触覚刺激、料理の香りなど嗅覚刺激、食事の彩りなどの視覚刺激・・・のように、刺激をたくさん与えて、より食事への感度を高めましょう。

2本柱のバランス

食事支援において、調理と食事介助の両方の柱が重要であることは言うまでもありません。ただし、前者が全く配慮されていないと、どれほど食事介助に配慮しても、最終的に「食べさせない」という選択を取らざるを得ないことがあります。ですから、”調理”への配慮がまずは最優先となります。

いずれにしても、両方の柱をバランスよく作ることで、食事支援は安全かつ楽しいものとなるのです。

【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。

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