【びぃどろ講座】1口量ってどれくらい?

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食事介助のときに、スプーンに載せる1口量ってどれくらいかな?と考えたことがありますか?

今日は食事介助の際の適切な1口量についてです。

スプーンサイズの基準って?

食事介助指導の場面で、よくスプーンのサイズについて質問を受けますが、本当ならば「どれでもいい」と言いたいくらいです。だってどんなサイズでも1口量にさえ気を付けてくれれば、そこまで影響がないはずだからです。
それにスプーンの場合、自力での摂食をするためにはグリップの長さ・形状・太さなども重要となります。ヘッド(口に入る部分)の大きさ・深さ・形状も選択基準に含まれます。

そう考えると、スプーンをどれにするのか?と言うより、1口の量をどれくらいにするのか?について考える方が良いのではないか?と思えます。

とはいえ、基準が全くないのも問題ですので、今回は選び方の基準をお伝えします。

スプーンの種類

素材

  • 金属:スプーンの中でも一般的な素材で、サイズ・形状などのバリエーションも豊富。金額も安価で購入することができる。食洗機対応。感覚過敏の人は拒否する傾向あり。噛み込みの強い人も歯を痛める可能性あり。
  • シリコン:大きさなどのバリエーションは増えているが、ホームセンターなど身近で売っておらず専門店か通信販売などでの購入となる。形状などは金属製に比べて、選択肢が少ない。感覚過敏や噛み込み癖のある方へは使いやすい。食洗機対応の場合がほとんど。
  • 木製:大きさの種類が少ない。口当たりが優しい。厚みがあり、捕食時に唇の力が弱くても、くわえやすいと言う人もいる。食洗機対応していないことがほとんど。食事介助にはやや不向き。

大きさ

今回はどのご家庭にもありそうな金属製であり、かつ一般的な大きさのものを、いくつかピックアップ。

  • ティースプーン:よくある大きさのもので、ヘッドの大きさが2〜3㎝程度。食事介助では、この大きさが推奨されることが多い。ただしグリップが短く、介助しにくい。
  • カレースプーン:やや大ぶりなスプーン。食事介助のときに、早く食べさせたいあまり、使ってしまいがち。グリップが長いので、介助がしやすいと言う点で選択されてしまうことも多い。
  • スープスプーン:ヘッドの部分が正円に近い。手指の運動機能や変形の影響で、スプーンの正面を口に入れることができない方には、横からも食べられるメリットがある。
  • パフェスプーン:ヘッド部分がティースプーンに近く、グリップが長いので食べさせやすい。ただしヘッド自体に深みがあり、唇の筋力の弱い方にはうまくすくい取れないと言うデメリットもある

1口量の基準

上述のスプーンの種類から検討して、最もその方に適したスプーンを選択します。その上で、1口量を決めるわけですが・・・、そもそも1口量を悩むと言うことは、『嚥下障害』がある、または『食事に配慮を要する状態』なのです。ですから、とくに問題のない私たちの食事基準を用いてはいけません。

それを踏まえて、1口量の基準を一言で言うなら…
「丸飲みできる大きさ」

いや、もちろん医学的に言ったら、いろいろ言われてしまうかもしれません。嚥下能力が人によって異なりますので、1口量も人によるとかのご意見もあるかもしれません。でも、「丸飲みできる大きさ」って考えることは重要です。

丸飲みできる大きさ?

丸飲みできる大きさと言うけれど、その大きさも人によって違うのは当たり前ですね。

そのため、まずは健常な成人の場合をイメージしましょう。丸飲みするにあたり、食事がどこを通るのかを考えてみます。

喉です(笑)

喉を経過して、食道を通り、胃に入りますね。とりあえず細かいことは考えず、食道に食べ物が入ってくれれば、窒息や誤嚥の心配から解放され、安心です。つまり食道の入口をスムーズに通過してほしいと言うことです。
つまり、食道の入口より大きいものは丸飲みできない=危険なんです

では、食道の入口って直径何センチでしょうか?

食道の入口は、成人で直径2〜3㎝と言われています。つまり、2㎝以下であれば、丸飲みになってしまっても、詰まることなく食道入口を通過できるんです。そんなことから、まずは、食事の1口量を2㎝幅のスプーンに乗る量にとどめます。

しかしここで忘れてはいけないのが、これが健常な成人の適切量であると言うこと。

※お子さんの場合は、食道入口の大きさはもっと小さいため、この量では危険です。今回はあくまで成人の例で話を進めます。

食事介助を受けるような嚥下障害の方は、それよりずっとリスクが高いので、この2cmをまずは最大値とします。その上で盛る量を決めます。たとえ幅2㎝以内にとどめていたとしても、山盛り盛っていたら危険性は高まりますので慎重に。

そう考えると、カレースプーンでの食事介助・・・怖くないですか?

案外、1口量って、少ないんです。

ステップダウンはその都度、ステップアップは3口目

1口摂取した際に、明らかに様子がおかしいようでしたら、1口量を減らすなどの調整を行いましょう。ステップダウンについてはすぐさま対応してください。

それに対してステップアップは少し状況が違います。この2cmの量は、咀嚼ができる方には、やや物足りない量です。中には少なすぎて飲みにくいという方もいらっしゃいます。そのため、3口程度摂取してもらった段階で1口量をさらに調整していくのが良いでしょう。必ず数口摂取してもらうと、それが見えてきます。

3口目あたりで様子が見えてきたら、ステップアップを考えましょう。

一番大切なこと

食事介助の際に、食べている方の口の動きを見ることです。多すぎたら必ず食べにくそうにします。少なすぎたら、嚥下反射が出にくくなります。そうすることで適量を探ることが必要であることは言うまでもありません。

どうしても日々食事介助をしていると「早く食べて!」って思うこと多くなりますよね?きっとそう思うのは私だけじゃないはず・・・(^_^;)そのため、1口の量を増やしてみたり、増やすためにスプーンサイズを大きくしてみたり。

だって食事に時間がかかりすぎてしまって、結局量が摂れないなら、それはそれで心配になります。効率的に、食事量を増やしたい場合、1口量を増やすことを選択する場合があることも知っています。

でも、1口量を増やして、万が一窒息したら、死に直結します。ですから、食事摂取量が増やせないことの解決を、1口量ではなく他の方法で導き出してほしいなと思います。

そして全国の栄養士さんやSTさんが、摂食量を総合的に考えて食事支援ができるようになればいいな、と感じています。

ご参考にしてください♪

【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。

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