食生活をイメージする③~なにを食べる?~

『たべる』について, 『暮らす』について, だんらん作りの知恵袋

食生活をイメージする
今日は3回目
何を食べるか、についてです

※過去記事はこちら
①はじめに⇒
②だれが調理する?⇒

何を食べるか、という言葉には
いろいろな意味が含まれます
食事の種類、味つけ、素材、国、地域、文化・・・
こんなのも要素に入りますし
栄養面の情報もふくまれてきてしまいます。

ですが、今回はあくまでどんな形態の食事を食べるか
について焦点を当てていきたいと思います。

病院や施設のように
専門の管理栄養士や調理師のいない
自宅の食事では調理するひとによって
調理できるメニューにも限りがあります

ミキサー食だって
1人分を作る場合には
量が少なく
綺麗にミキサーが回らないことがほとんどです

ミキサー食なんて、病院だったら
一瞬で作れるのに
逆に在宅だと作りにくい、そんな場合も充分あるのです。

あとは柔らかく炊いた食事を作りたくても
他の家族がクタクタに炊いた煮物より
歯ごたえのある食事を好む場合は
2種類作る手間が生じます

そんなのを全食事に配慮していたら
いったい何食分を作ればよいのかがわからなくなってしまいますね。

ムース食を導入したい場合
ゲル化剤を使用しないと
作れないものも多く
調理が複雑化・長時間化していきます

ゲル化剤の使いかたなんて
ほとんどの方がご存知ないでしょうから
まずは使いかたを知るところから考えないといけませんが
知るための情報も無いのが現状です

またゲル化剤を使用するといっても
そもそもゲル化剤は通販でしか
購入できないことがほとんどであり
購入する行為自体が
やや手間に感じてしまうものです

そのためご家族へ指導する際には
「何を食べたらよいか」ではなく
「なぜ、食事形態を配慮しないといけないのか」
その理由を充分に伝える必要があります

ここが難しい・・・(;^ω^)

ムース食などが望ましい方がいた場合
「ムース食しかダメ」という意識で過ごしていると
ご家族と外食もほぼできません
「今日は疲れたから、お惣菜で・・・」
などもできません

けれど、飲み込み(嚥下能力)が
どういう状態にあり
どういう配慮を要するのか
という、メカニズムをご家族が理解していれば
ファミレスでもコンビニでも
案外食べられるものはあるのです

嚥下障害のない人が
当たり前のようにしている
外食や総菜・お弁当などの利用を
嚥下障害がある人でも活用できるようにしなければ
食事を提供する家族は
疲弊してしまいます

安全な食事形態の提供を
長く続けるコツは
すこし手抜きしても大丈夫・・
というところまで
ご家族が思えること

それを踏まえたうえで
例えばムース食の場合
・ゲル化剤の種類は何にするか
・ミキサー撹拌タイプのゲル化剤を導入するならミキサーはあるのか
・ゲル化剤の購入ルートはどうするか
・どのくらいの固さのムースがいいのか
・主食(お米やパン)用のゲル化剤とおかず用を分けるのか
・・・といったことを検討します

ミキサー食の場合
・ミキサーかミルサーか、すり鉢か
・栄養付加が必要なのか
・増粘剤(とろみ剤)を足すのか
・・・といったことを検討します

他にも検討する項目は多岐に渡りますが
ご家族と当事者さんの
生活に落とし込むためには
金銭的・時間的・身体的・精神的に負担を最小限にしなければ
どんなに安全な食事であっても
継続できなくなり
無意味なものとなってしまいます

対象者の生活をよりリアルにイメージする
そうして初めて
その家庭で「作れる食事」が
決まってくるのです

【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。

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